どうなるシリーズ

どうなるこの国の障害者福祉

―「社会保障と税の一体改革」と障害者福祉―

―「社会保障と税の一体改革」と障害者福間もなく「社会保障制度改革国民会議」の名のもと、これから先のわが国の社会保障の「あり方」に関して、その考え方、大枠の方向性が示される予定です。

1)、 自助・共助・公助を最適に組み合わせ、家族相互・国民相互の助け合いの仕組みを通じて自立生活の実現を支援する。
2)、 機能の充実と重点化・効率化を同時に行い、負担の増大を抑制しつつ、持続可能な制度を実現する。
3)、 年金・医療・介護は社会保険制度を基本、国・地方の負担は保険料負担の適正化に充てることを基本にする。
4)、 あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合う観点等から、消費税・地方消費税収を充当する。
 そして、政府は、これらの基本方針にもとづき、社会保障制度改革を行う。必要な法制上の措置については法律施行後1年以内に、国民会議の審議結果を踏まえて講ずる。

 以上が昨年(平成24年)8月に成立した社会保障制度改革推進法の基本方針です。そして、この法律によって設立された「国民会議」がすでに10数回の審議を重ね、その審議結果をこの8月に政府に報告、提案することになっているのです。

「社会保障と税の一体改革」とは――。
 わが国の少子、高齢化、人口減少が過激に進む中で、いかに社会保障の必要財源を安定的に確保するのか、又、財政の健全化を同時に達成するための税制の改革について一体的に検討を進め、最終的に国民的な合意を得た上でその実現を図る、という政府の大方針にもとづく諸改革のプロセスです。
 平成21年9月に発足した民主党政権が、それまでの自民党政権の流れをほぼそのまま継承しました。社会保障制度改革推進法が成立する直前の、昨年6月(まだ民主党政権)には、民主、自民、公明三党による合意確認書が交わされ、この大方針についての共通の立場が確認されています。政党間の日常的な対立や政策の相違を棚に上げて、消費税の増税を容認し、それを前提とした社会保障制度改革にむけてその体制が強化されたのです。
 つまり、「社会保障と税の一体改革」とは、消費税増税というこの国の「税制改革」を実現して財源不足を補い、同時に増税収分の使途を含めて、近い将来の「人口減少の中での超高齢化」に対応するべく、現行年金、医療、介護の各社会保障分野の法財政上の改革をおし進めようとするわが国政府の大政策であると言えます。

社会保障制度改革推進法に定められた改革の基本方針(その2)では、「国民会議」に求める検討、審議内容として次の諸事項をあげています。

1)、 公的年金制度(今後の公的年金制度については財政の現況及び見通し等を踏まえ、国民会議で検討し、結論を得る。年金記録問題への対処及び社会保障番号制度の早期導入)
2)、 医療保険制度(国民皆保険を維持、国民負担の増大抑制と必要な医療の確保、医療保険制度の財政基盤の安定化等、個人の尊厳と患者の意思を尊重する医療の在り方、今後の高齢者医療制度については、状況等を踏まえ、必要に応じて国民会議で検討し結論を得る)
3)、 介護保険制度(介護サービスの効率化・重点化、保険料負担の増大の抑制と必要な介護サービスの確保)
4)、 少子化対策(人生の各段階に応じた支援、待機児童解消策等の推進に向けた法制上・財政上の措置)

先にもふれましたが、「国民会議」は時の内閣総理大臣に任命された有識者15人によって、平成24年11月30日に初会合が開かれました。そののち回を重ねて今日に至ります。すでに前記の諸事項に関する意見、提案が具体的な「あり方」としてまとめられつつあるようです。
 はたして、報告書は最終的にどのようにとりまとめられるのでしょうか。そしてこの先、これらの意見、提案が現行の社会保障各法制上にどう反映されるのでしょうか。私たち、国民一人ひとりの日々の暮しや命に直結するとても重要な問題です。さらには、この国の将来の「かたち」をも左右しかねない重大事です。
 法制度や財政の内容は大変複雑で難解です。それでも私たちは努めて審議の動向、報告書の内容、もちろん次の政府の対応についてまで関心を寄せつづけなければなりません。
 今日、障害福祉制度の改革はこの社会保障制度改革とは全く異なる目的と次元において進められています。「国民会議」は介護保険分野とそれらの事業を展開する社会福祉法人の「あり方」などについては相当ふみこんで意見しています。今のところ、障害福祉分野への関与は見当たらない、とはいえ、障害者福祉も社会保障の大枠のひと領域であれば、いずれ何らかの影響は必至です。
 「社会保障と税の一体改革」、目ばなしはできません。

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