どうなるシリーズ

どうなるこの国の障害者福祉

―何度も、高齢知的障害者の生活の場について考える―

近年―――

 「高齢障害者」、「障害のある高齢者」が急増中です。なかでも「高齢知的障害者」、「知的障害のある高齢者」のふえ方は、かねて予測されていたこととはいえ、いかにも唐突で仰天の感です(その背景などについては先の本紙面「至心No.147、2011年1月号」で報告させていただきました)。

 ところが、わが国にはいまだこの分野に対応する福祉施策がありません。「老化」や「病気」などで心身の機能が低下した人。そのため何らかの「介護」や「療養」が必要になった人など、そんな「高齢知的障害者」たちが安心して住まう場所が事実ないのです。

 障害者のグループホームやケアホームは、実際には昼間どこかに出かけることができる人だけが利用できる暮しの場です。今のこの制度には日中支援の職員配置がまったく見込まれていません。それに見合う限りの国の予算で、休日と夜間だけの支援を想定した報酬額しか準備されていないからです。

 この現実は、今、グループホーム、ケアホームで暮している人たちにとっても大きな心配事です。先々、昼間どこにも出かけることができなくなったら、はたして彼らは一体どうなるのでしょうか。

 又、国の政策転換によって旧来の障害者入所施設は「生活の場」としての役割を急速になくさせられつつあります。そんな状況のもと、「高齢知的障害者」の新規入所はほぼ絶望的です。



わが国の高齢者福祉施策は、周知のように現在介護保険法(制度)がその中核です。従来の老人福祉法とは別に法制度化され運用されてはや12年の歳月を数えます。この間、内にさまざまな問題や課題を抱えながらも、国民の長寿高齢化に対して一定の役割ははたしてきました。

 介護保険法(制度)の守備範囲はいうまでもなく、原則65歳以上の全ての「高齢者」です。それは「障害のある高齢者」、「知的障害のある高齢者」であっても例外ではありません。

 とすれば、この国の「高齢知的障害者」には、少なくとも12年前から、介護保険法(制度)を根拠とする多数の「住いの場」が用意されてきたことになります。又、それら「住いの場」は個々人の事情や所得状況などに応じて多種多様であり、加えて今なお増設、増加の傾向で推移しています。事業を担う事業者数も国の参入制限の緩和策によって大きく伸張してきました。

知的障害者が「老化」し、又、病をえたとしても、その時「はたしてどこで暮せるのか」ということでは、本来何ほどの憂いもないはずです。それが介護保険法(制度)のあるべき姿であるからです。国は決して無策ではなかったのです。



しかしながら―――

現状はそのあるべき姿にはほど遠い実態です。障害の有無にかかわらず多数の高齢者が介護保険法(制度)の恩恵に浴することができずにいます。高齢当事者や家族の切実な、そして最低限のニーズにさえ応えきれていません。まだまだ質・量ともに絶対的に不足しているのが今の介護保険法(制度)の実像です。「老々介護」や「介護苦心中(殺人)」など悲惨な事案の報道が今日なおあとを絶ちません。

このようなわが国の介護保険法(制度)のもと、ましてや「高齢障害者」、わけても「知的障害のある高齢者」の制度利用の困難さは、以前も今も何ら変ることがありません。そしてこれからもなお、全く期待ができない、といって過言ではないのです。

とくに「生活の場」としての介護保険法(制度)施設においてはです。特別養護老人ホームしかり。老人保健施設も又しかりです。養護老人ホームや認知症対応のグループホームはもともと利用不可(知的障害者は実質的に対象外)施設です。有料老人ホームは全ての面で論外ですし、これら各施設間のスキ間をうめる手だてとして、最今国がその設置を推奨する「サービス付高齢者向け住宅」においてさえ、所得の少ない(障害基礎年金のみ)障害者にとってみれば、いわば高嶺の花といった存在なのです。

これが「高齢知的障害者」と、この国の高齢者福祉施策の中核、介護保険法(制度)との関係の実相です。

「高齢障害者」も介護保険法(制度)の本来の目的のとおり、必要なときいつでも、自由に介護保険法(制度)施設が利用できるためには何よりも現行法制度が飛躍的に拡充されなければなりません。




ともあれ―――

この期に国はあらたな、福祉の理念、枠組みを創出する必要があるのではないでしょうか。それは「高齢障害者福祉」という領域、分野です。「障害のある高齢者」への独自性のある施策体系(高齢障害者福祉法)の構築です。

具体に、それは現行障害者自立支援法の理念や目的とは大いにそれらを異にし、現行介護保険法(制度)の枠組みや仕組みを根本的に改善した内容です。さらには「高齢障害者」の障害特性や所得状況に十分着目、配慮された制度設計にもとづくものです。

既存の障害者入所施設は否定され、削減されるべきではありません。あらたな役割(介護や療養、そして看取りも視野に入れた高齢障害者の住いの場としての)をもつ高齢障害者施設への転用をこそ図るべきです。又、現行のグループホーム、ケアホームのあり方も抜本的に見直されなければなりません。その第1は、やはり日中の支援職員を、それも複数配置できるほどの報酬体系を確立することにつきます。

これからの厳しい局面をむかえては、本当にあらたな発想が必要です。諸法、諸制度を再編成、あるいは駆使し、かつ創設してこそ道は拓かれるものでしょう。

何もせず先送り、放置はもはや許されません。それは高齢障害者への人権侵害に通じます。国はすみやかに実行すべきです。






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